山崎元氏の「企業年金無用論」(1月28日発売の週間ダイアモンド「マネー経済の歩き方」連載238号掲載)の要約を、本誌1月29日号で紹介した。
早速に読者の方から「全面的に賛成でも反対でもありませんが、思うところをしたためてみました」とメールがありました。末尾に「元 厚生年金基金(連合型) 事務長」とあるように、長く確定給付企業年金である厚生年金基金の運営に携わって来た方のようである。
企業の内部にあって「企業年金の最前線」をよく語っている。元事務長氏に転載承諾をいただいたので、その要約を掲載する。
第1に「企業価値」と企業年金財務の「矛盾」について、山崎氏は「年金の資産・負債の価値変動によって、企業価値が大きく振り回されることは合理的ではない」と断言する。
元事務長氏の見解(要約)『問題はリスクの許容にあるのではないか。大きく振れないよう資産運用は低リスクを標榜すべきである。退職給付債務も年金資産残高も、企業会計上は正当な評価に基づき、利害関係者に対して継続的に開示せざるを得ない。多岐に渡るリスクをも含めた姿、それが企業の実態である』
第2は、企業年金運営主体の企業の「資産運用」のあり方について、山崎氏が主張する「企業年金がプロの運用会社をチェックする別のプロとして存在することに意味があったのかも知れないが、(略)」について。
元事務長氏の見解(要約)『企業年金は運用のプロではない。資産運用委員会なるものも有ったが、結局は無責任体制を取り繕うものであった。委員も資産運用の経験や知識に優れた者が選ばれているのではなく、立場上委任されているに過ぎない。実質的に、企業年金は、必ずしも運用に関するプロ集団ではない』
第3は、企業年金の「機能」から制度の「公平性」について、山崎氏が主張する「税制上の公的なサポートの大きさが国民の一人一人について、勤務形態や所属する会社・組織によって条件が異なるというのは、国の制度のあり方としてフェアでない」について。
元事務長氏の見解(要約)『各企業によって、制度がまちまちだったのは、往時としては労使双方から望まれていた制度だったのかもしれない。労働者は、就職先を選択する際のひとつの要素として年金制度を見る。経営者側は他社より優れた制度であることを強調しようとする。双方の思いが一致したところに、人が集まる。フェアな制度だったら、人材確保で優位に立てない』
第4は、今後の企業の退職給付の「原理」は、山崎氏の主張「優先的に考えるべきは、加入者個人の事情や生活設計だろうし、個人が年金の都合で転職や独立に際して損をするような仕組みは良くない」「企業単位、職域・業界単位で細切れに制度を運営する合理性はない」について。
元事務長氏の見解(要約)『従業員に対する処遇も競争なのである。企業単位で、制度や給付の内容が異なっても、それも企業間の競争のひとつである。もともと国民年金や厚生年金の制度があって、更にその上積みをしようというのだから、これは各企業経営者の方針が異なっていたとしても調整のしようは無い』