民主党年金改革案、国会論議を読み解く(その3)
★勤労者世帯主の配偶者、多くは専業主婦である。約1063万人に達する。その99%の1053万人が女性、10万人が専業主夫となっている(H19年社会保険事業年報)。1986年(S61)4月1日の基礎年金導入後は、「第3号被保険者種別変更届」という「ゼロ保険料登録」をしておけば65歳から老齢基礎年金の年金額計算対象になる。その期間は、ゼロ保険料で納付済期間としてみなされ実績算入されるわけだ。民主党所得比例年金でこの第3号被保険者はどうなるのか?衆議院厚生労働委員会4月9日の質疑応答(一般質疑・抜粋用紙「年金実務」4月19日号)から民主党長妻昭厚労相の「考え方」を聞いておこう。
★公明党、元厚労相坂口力議員の質問。
「一元化(全ての所得者は所得比例年金と最低保障年金に強制加入)された場合、個人単位になると、3号被保険者の保険料も出していくのか?」
★民主党長妻昭厚労相の答弁。考え方として2方向を提示している。
「例えば、ひとつの考え方としては、夫のお給料の半分が妻の所得とみなして、保険料をいただいていくという考え方」
もう一つの考え方は、
「妻はゼロ保険料ということで、それを歳入庁というところに届け出て、ゼロ保険料の届出をするということで、その期間は最低保障年金が受給できる期間としてカウントされる」
★現行の第3号被保険者の問題点はどこにあるのか?これは2004年の年金改正後の年金論争でくすぶってきた問題である。幾つかまとめておこう。
1.出産育児に専念する主婦への子育て支援としてのゼロ保険料=第3号被保険者制度は大変ありがたい制度である。しかし、すでに出産や育児を卒業した方々にまでゼロ保険料支援は必要なのか?
2. ゼロ保険料=第3号被保険者になれるのは厚生年金と共済年金(公務員・私学職員)加入の配偶者である被扶養配偶者である。子育て支援としての年金制度ならば、自営業・フリーターなど国民年金加入の配偶者の被扶養配偶者は、なぜ国民年金保険料を払わなくてはならないのか?
3. ゼロ保険料=第3号被保険者の基礎年金財源は、厚生年金と共済年金(公務員・私学職員)加入者の保険料と、国民の税金によって賄われている。独身者や共働き夫婦からすると、何の因果で他人の嫁さんの年金まで面倒みなくてはならないの?となる。
子育て支援という「理屈」はわからないわけではないが、子のない被扶養配偶者、さらには出産や育児の卒業者までの保険料や税金の面倒は見きれないというのが本音だ。
4.女性の人生は波乱万丈である。結婚、離婚、再婚、就職、失業などを繰り返している間にゼロ保険料=第3号被保険者の期間どころか、国民年金最低必要加入期間25年以上すれすれというケースが多い。しかも、独り身で国民年金だけの加入であると65歳からの老齢基礎年金は平均的に月額3万円から4万円ということになる。
5.ゼロ保険料=第3号被保険者の認定基準は年収130万円未満にある。130万円以上働くと、第3号被保険者から除外されるばかりか、健康保険の被扶養配偶者からも除外される。ゼロ保険料=第3号被保険者のままで働く女性の多くが、年収130万円以上になって働くインセンティブがおきない問題はこの被扶養配偶者の認定基準にある。かといって、この認定基準を引き上げ、ゼロ保険料対象者を増やせばいいかというとそうでもない。年収200万円程度で厚生年金、健康保険料を払うこともバカバカしいという専業主婦もかなりいるのが現状である。
★女性が独り身になっても少額年金で終わらせず、なんとか月額15万円程度の年金にするにはどうしたらいいか?
その導きが専業主婦にも所得比例年金と最低保障年金というのが民主党年金改革案である。これまでゼロ保険料から一転して、所得比例年金に加入し保険料強制徴収とするのが制度改革の本質であるはずである。しかし、夫の給与の半分程度を被扶養配偶者の保険料計算の基礎にするとなると、夫の可処分所得はさらに減る。
ゼロ保険料=第3号被保険者の1000万人の女性を怒らせず、心静かな気持ちで「所得比例年金」を理解していただくのは容易ではない。
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