保険金に相続税、その年金払いに課税された所得税は返還となる
★「年金払い生活保障特約付き終身保険」は、保険金の全部、また一部を有期の年金で受け取れる。死亡保険金に相続税課税された後、その年金受取分への所得税課税は「二重課税」で「課税は適法」とした二審・福岡高裁判決を破棄。所得税の課税処分を取り消し、原告側勝訴とした一審・長崎地裁判決が確定した。「定期預金にも相続税と所得税の二重課税がある」(日経新聞7月6日夕刊)と原告側税理士の訴えは、他の金融商品の「二重課税問題」をあらためて浮上させることになった。
★長崎市の女性は2002年に夫の死亡保険金6300万円を受け取った。まず、死亡保険金6300万円が相続財産として相続税が課税された。しかし4000万円を死亡保険金として一時金として受け取り、残り2300万円を10年確定の年金払いとした。ところが、初年度の230万円の年金に対して、税務署は年金を雑所得として所得税を課税した。ここで遺族である女性はこれを「二重課税」として、国税庁相手に訴訟に持ち込んだ。
一審・長崎地裁では原告側遺族が勝訴、二審・福岡高裁は「課税は適法」とし原告側遺族が敗訴。最高裁判決は、一審・長崎地裁の判断を支持したことになった。
★最高裁の判断は次の点にある。
「「相続税の対象となる年金受給権と、毎年の年金のうち運用益を除いた元本(現在価値)部分は、経済的価値が同一」「今回問題となった1年目の年金は、全額が元本に当たる」と判断し、同一資産への二重課税を禁じた所得税法に基づき非課税とすべき」(日経新聞7月6日夕刊)。
「1年目の年金で支払った所得税2万5600円」を還付するとなった。
★今回の長崎市の女性遺族の場合、敗訴した国税庁は、「1年目の年金で支払った所得税2万5600円を還付する」ことになったわけだが、こうしたケースは生命保険会社一社で平均3000件という。
「日本生命保険によると、現時点で遺族に保険金を支払い中の契約は約3400件。明治安田生命保険は約3600件、住友生命保険も裁判で示された資料で約5000件という。所得税を返還する必要があるのは数万件にのぼるとみられ」と日経新聞7月7日号は報じている。
★日経新聞7月7日夕刊によると、
野田佳彦財務相は「過去5年分の所得税は請求を出してもらい、減額更正する形で対処していく」と述べ、所得税分を返還する方針を示した」とある。
国税の徴収権5年時効を適用するため還付されるのも過去5年ということになるようだ。
また、他の金融商品の二重課税に関しては「今回の判決を踏まえ、改善すべきは改善していく。政府税制調査会で議論し、来年度税制改正で対応する」とのことである。
★この二重課税問題は日経新聞7月7日号では、定期預金などの他に「株式を相続した場合に生じる配当期待権や著作権、特許権なども扱いを整理する必要」と指摘している。
★実際には、相続人が3人ならば8000万円以上の遺産が相続税納付の対象となる。
しかし、その数は毎年の死亡者の4%~5%程度である。
2007年度(H19)で死亡者108万人のうち約4万6820人、4.2%が相続税納付対象の遺産を残した。相続税と所得税の二重課税、新聞マスコミが騒ぐほどには、実害は誰もが遭遇する一般的な話ではないようだ。
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