共働き夫婦 対 片働き夫婦 妻専業主婦3号の世帯は強かった
★『年金「もらい過ぎ」15兆円』と日経新聞10月31日号の記事である。本来支給額と現在支給している「特例支給額」の差2.5%を埋めるためにも賃金も物価も下落したら年金減額できる「制度改革が焦眉の急だ」と報じている。この程度の制度改革もなかなかできないのが、この国の政治家の「年金センス」だから、先生達は年金制度の根本的な「矛盾」にも余り関心はない。本稿では、この国の年金制度の所得階層と世帯形態でどのような「過剰」が偏在しているかを見てきた。
★その昔、2004年、同じ年収なら共働きでも片働きでも負担と給付は同じである、と言う年金の専門家がいた。本当に同じなのだろうか?
夫婦で働いてそれぞれ300万円の合計年収600万円、夫だけが働いて年収600万円、共働きと片働きの2つの世帯ケースの年金の損・得勘定を試算してみたい。
結論は、やはり片働き夫婦、妻専業主婦3号の世帯は強かった。
★共働きは夫婦それぞれ40年間ともに働いた場合、片働きは妻60歳まで専業主婦期間を40年とした場合である。
年金受取期間は、この試算では夫20年間、妻25年間(そのうち遺族年金受給期間5年間)としても、ここも当然に約7189万円で同じである。
★違いが生じるのは、現行制度を夫20年・妻25年、現行制度の受け取り総額と「期待収益」年金の給付総額の「差額」である。
共働き600万円年収、片働き600万円、同じ保険料負担でありながら、「もらえない年金」の差額はあまりに違う。
★共働き600万円世帯、片働き600万円も
40年間の負担総額は約4392万円(労使合計)。
これを年利1.5の年金原資も約6047万円も同じである。
当然、この原資を期間25年、1.5%の年金給付利率で試算した「期待収益」年金の受取総額と現行制度の給付総額の「差額」を比較である。
★夫の年収600万の片働きのもらえない年金の差額は、
現行制度の年金給付総額約6672万円-「期待収益」年金の受取総額約7189万円≒▲517万円。
★夫300万円、妻300万円、共働き夫婦の場合は、
現行制度の年金給付総額約2891万円×2人分-「期待収益」年金の受取総額約3594万円×2人分≒▲1407万円。
★共働きも片働き夫婦とも40年間の、現行の給付総額と「期待収益」年金額の差額、「もらえない年金」としての持ち出し額は、それぞれ大きなものがあるが、
その金額の「差」は約900万円も片働き夫婦がお得ということである。
★現行制度の年金給付総額でも片働き夫婦と共働き夫婦の差額は、
約6672万円-約5782万円≒▲890万円。
この差額は、片働きの妻には遺族厚生年金があり、片働き妻には遺族厚生年金と妻自身の老齢厚生年金が調整されてしまうところから来る。片働き夫婦で妻が夫より5歳程年下とすると、加給年金約39万円×5年≒195万円が加わるから、この「差額」は▲1085万円となる。
★「期待収益」年金の受取総額と現行制度の給付総額の「差額」で、「もらえない年金」が発生するどころか、断然に現行制度の支給総額が上回るのは、共働き夫婦、片働き夫婦、ともに年収400万円以下の場合である。
合計年収400万円の共働き夫婦では、プラス約112万円。
夫の年収400万円の片働き夫婦では、プラス約838万円。
★共働き夫婦、片働き夫婦、現行制度で比較しても、「期待収益」年金で比較しても、片働き夫婦に優しいというのが今の厚生年金の負担と給付の関係である。
こうした現象が生まれるのは、厚生年金の遺族厚生年金、加給年金の在り方が共働きの妻には冷淡な扱いにあるようだが、厚生年金のシングル被保険者、共働き夫婦には強制的所得移転を強いていることは否定しようがない。
★なお、「期待収益」年金は、あくまでも年率1.5%で試算した「想定額」である。
★10年物国債の過去5年の平均(2010年度基準)であるので、これが将来にわたって保証されているわけではないが、30年物国債の2011年10月時点の応募者利回りは、1.938%であるからそんなに無理な利率ではない。
★共働き夫婦でそれぞれ年収300万円以上、片働き年収550万円以上、シングルで年収400万円以上であれば、40年間平均1.5%程度、自分で運用できれば、現行制度の年金額を上回る。
★個人が市場運用で稼げるかもしれない「期待収益」年金と国が支給する年金が「損・得」を超えて均衡するのは、「安定」と「安心」という国民的信頼感である。
★負担の公平性と信頼を再構築することは可能なのであろうか?
共働き夫婦、片働き夫婦、シングル、それぞれの負担と給付、年利1.5%の40年間の積立額を比較しても、「不公平感」の根本は現行の基礎年金制度にあることはあきらかである。
★ここに手をつけずに、打つ手は支給開始年齢引上げ、年金給付減額、保険料引上げ、この3点セットを繰り返すたびに、高所得者ばかりか、今やミドルからロウアーミドル層にまで着実に年金嫌悪は拡大してしまうであろう。
★2011年の状況は、こうした根本的解決からはドンドンと遠のきつつある。
「年金抜本改革」を錦の御旗にかかげて政権奪取した政権与党民主党にはもはや、そんな志は微塵もないかのようだ。この国の年金は、迷路に踏み込みさらに迷走は続く。
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